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杉田卓也税理士事務所

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税理士という職業は無くなる?①

 

こんにちは!横浜の税理士、杉田卓也です。

今回のテーマは、『税理士という職業は無くなる?』です。

 

 

 AIの登場により将来なくなってしまうであろう職業のリストを記した論文が発表され話題になりました。その筆頭に挙げられていたのが税理士という職業です。

今まさに税理士業を営んでいる当事者としては何とも言えない気持ちですが、的外れな発表ではないことは確かだと思います。とはいえ、税理士という職業自体が100%なくなってしまう、とも思っておりません。(当事者なのだから、そう願わざるを得ないのでしょう、と同情されてしまうかもしれませんが。)

 

 税理士は『会計帳簿や申告書を作成し、税金の額を計算する人』というイメージで語られることの多い職業であり、より言葉を選ばずに言えば、『書類を作成し、税額を計算するだけの人』といった評価が一般化している印象です。まさに、『書類を作成し、税額を計算するだけの人』であるのだとすれば、間違いなくAIの登場により駆逐されてしまうでしょう。

書類を作成し、税額を計算することは、税理士の業務内容に含まれる一つの要素にすぎません。そして、その『作業』にある程度の時間を要することも事実です。

昨今の日本において労働生産性の向上が急務と叫ばれておりますが、税理士業界も御多分に洩れず、といった状況です。つまり、『作業』の部分をいかに省力化できるのかが大きな課題です。(そんな当たり前のこと何をいまさら、、、ですが、税理士業界はそのあたりが完全にガラパゴス化している業界なのです。そもそも日本という国の税法を主に取り扱うわけですから、職務内容自体ガラパゴスとも言えます。)

AIは、税理士業界が抱える『作業』の部分を手助けしてくれる有り難い存在だと、私は認識しています。

実際既にクラウド会計の登場が業界を賑わせておりますが、実際に使用してみるとなるほど納得、大変作業効率の良いシステムだと言えます。(今のところ一長一短ありますが、使い勝手は時間とともにどんどん向上していくことでしょう。)

AIの手助けにより『作業』から解放されれば、税理士業の本来の要である税務コンサルティングの部分に大半の時間を費やすことができます。将来顧客から選ばれる税理士になれるのか否かの境目は、本丸であるコンサルティングにどれだけ磨きをかけられたのか、顧客に対して有益なアドバイスができるのか、にかかっているのだと思います。

 

 とはいえ、いずれAIがコンサルティングの部分も代替してしまうのでは?という意見もあるでしょう。

しかし、コンサルティングの部分はAIが(少なくともすぐには?)代替できない領域だと私は考えます。

仮に相続が発生し、遺産分割協議が必要となったシーンを想像します。おじいちゃんが亡くなり、遺されたおばあちゃんとその長男・次男が遺産分割をする。おばあちゃんが余生を安心して過ごせるように自宅や預貯金の大半をおばあちゃんに、長男は経済的に余裕があるため遺産を取得せず、次男は晩婚で子供の教育費用や住宅ローンが重なり経済的に苦しいので預貯金の一部を取得できたらとても助かる。

そんな分割が家族の総意に適うのだとした場合に、そのような提案ができるAIが存在するとは思えません。(遺産分割への介入は非弁行為として禁止されておりますが、あくまでも税務上有利な分割案を税理士が提示することは問題ありません。)

人間は感情を持った生き物です。人間の感情を勘定に入れた上で、最適解を提案することは他でもない人間にしかできないハズです。

税理士は当然ながら相続税額にどう影響を及ぼすのかを含めて最適解を考えます。

その最適解は相続税額の節税が必ずしも主目的ではなく、家族の今後の人生や感情を考慮に入れたものであるべきだと考えます。(なかなか想定通りにいかないケースもあるでしょうが、専門家として相続人皆が納得できる着地点の一つを提案できる存在でありたいと思います。)

 

仮に、課税当局が税務相談に応じるAIを開発したとします。このAIがグレーゾーンの多い税法を完全に理解し、適切なアドバイスができるでしょうか? 

課税当局が開発するのであれば、納税額を確保できるよう保守的思想をベースにせざるを得ず、グレーゾーンを突き詰めて分析し、納税者に有利な可能性を模索するようなシステムは構築されないでしょう。

(それは悪いことではなく、課税当局という国の税収確保を命題とする立場からすれば、至極当然のことです。)

 

それでは、民間企業が税務相談に応じるAIを開発できるでしょうか? 

民間企業が課税当局の協力なしに税務事例のビッグデータを収集することは不可能と考えられます。もし課税当局との共同開発となれば、開発結果は上記のとおりです。

 

そもそも、税法はYES or NOを簡単に区分けできるような単純なものではなく、様々な前提条件や事案背景も含めて立法趣旨に適うのかどうかの判断が要求されるものです。

自ら根拠をもってYESだと判断したものが、税務調査でNOと指摘される。そこで自らの判断根拠を税務職員に根気よく説明し、協議の上で落としどころを探る。そのような共通理解のもとで申告納税方式は成立しているのだと思います。

 

さらに、『自発的な提案』についてはどうでしょうか?

例えば、顧問先との打合せを想像してみてください。今後の経営計画等について話を進める中で、経営者の意向をしっかりと確認できていれば、税務上選択すべき有利な選択肢を提案できるかもしれません。

基本中の基本ではありますが、仮に多額の設備投資を予定しているならば、消費税の課税事業者選択や簡易課税不適用による影響額をシミュレーションすべきでしょうし、また仮に経営力向上設備の導入を予定しているならば、租税特別措置法の税額控除や固定資産税軽減特例が使えるかもしれません。

従業員給与の増額計画や研修制度の拡充計画があれば、所得拡大促進税制の適用可非を検討すべきです。

個人事業からの法人成りに関しても、適切なタイミングでシミュレーションし、その有利不利を税理士サイドから提案すべき古典的事案です。

(近年は社会保険料の増額や給与所得控除の縮小等が法人化のデメリットとして目立ちますが、それでも総合的にシミュレーションした結果メリットの方が上回るケースも多々あります。)

家族へ所得分散して節税するならば、適正額がいくらであるのか、税務上不相当に高額であるとして否認されてしまう射程距離はどの程度なのか。

海外進出をするならば、外国子会社を設立するのか、それとも外国支店を設置するのか。その場合の投資の回収は配当で戻すのか、ロイヤリティの受払いをするのか。タックスヘイブン税制や移転価格税制の適用はどうか。

グループ会社の再編を検討するならば、欠損金の引継・使用や含み損の実現が制限されてしまわないか。

基本的な事項から複雑専門的な事項まで、限りなく様々な論点が登場する可能性があります。

 

アイデアありきで、それを実行した際に生ずるであろう一般的な税務上の取扱いをAIに判断させることは可能と思われますが、アイデアそのものをAIに発案させるシステムを構築するのはなかなかにハードルが高いものと考えられます。

そこへ予防法学的な意味も含めて税理士が関連税制を語るのだとすれば、顧問先には有益なアドバイスとなるのでしょう。

さらに、単に教科書的な税制を語るのではなく、実務感を伴ったアドバイスができれば最良と考えます。

 

一方で、単純な税務上の取扱いを調べること、言い換えれば判断に迷いようがない事柄については、AIの代替領域となるのでしょう。

私は開業後最初の確定申告期に国税局主催の電話相談センター業務に従事した経験があります。引っ切り無しに鳴り続ける電話に対応する中で、「1月に引越しをしたのですが、申告書は前の住所と今の住所とどちらの管轄税務署へ提出すればいいですか?」であるとか、「病院に車に乗って行ったのですが、駐車場代とガソリン代は医療費控除の対象ですか?」といった知っていさえすれば判断に迷いようのない質問が多々あったことが印象に残っています。

現状でもグーグルで検索すれば答えはいくらでも転がっていますが、いずれは課税当局が開発したAIに質問すれば、すぐさま答えてもらえるといった環境が整備されることだろうと思います。

そのような時代が来れば税理士はお払い箱だと嘆く同業者がいますが、その程度の事案に対応するのが税理士という資格なのだとすれば、残念ながらすでに税理士は終わった職業なのでしょう。

確定申告時期ともなれば、まさに猫の手も借りたい状況の中で、税務職員も税理士も無料相談に従事し、膨大な数の事案に対応します。ただし、持ち込まれる事案は単純明快なものに限っており、複雑な事案は時間の関係上受け付けていないのが現状です。

この単純明快な事案こそ、AIの手を借りることが望ましいのです。

そして、複雑で前提条件や取扱いをじっくり検討すべき事案こそが、税務職員や税理士が対応すべきなのだと考えます。

 

私はAIに関して素人ですが、ディープラーニングという作業を通じてたくさんの事例を学習させ、その事例を判断基準として自らが学習した選択肢の中から最も適切とされる答えを瞬時に導き出すのがAIなのだと理解しております。

通達や事例集を学習させれば一般的であったり、先行事例と同じケースに対しては解答を導き出すことが可能でしょう。

しかし、税務の現場は常に新しい(場合によっては複雑な)前例のない事象が登場し続け、判断の拠り所となる税法も改正に改正を重ねていく世界です。

法の穴をついた節税策とのイタチごっこを繰り返して、無駄に複雑化しているという側面もあります。

その新しく複雑な事例に逐一対応できるのは、他でもない人間が作っている税法という法律の思想を考察し、培ってきた経験や知恵をフル稼働して解決に勤しむ税理士以外にはいないと考えます。

 

 

AIが登場する時代に生きる税理士として自戒の意味も含めてその想いを文章にしてみました。

数十年の時が経過したときに、税理士という職業が存続し続けていることを願ってやみません。

 

 

 

 横浜の税理士 杉田卓也

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