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杉田卓也税理士事務所

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節税で社会保険料増額の落とし穴?

※ 以下掲載記事に関するメール等でのご相談はお受けしておりません。ご了承ください。

 

こんにちは!横浜の税理士、杉田卓也です。

今回のテーマは、『節税で社会保険料増額の落とし穴?』です。

 

 

 家族で経営しているオーナー会社はたくさんあります。例えば、夫が代表取締役社長で、妻が取締役や従業員となっているケースは多々存在するでしょう。

家族で会社を経営するメリットの一つに、所得分散による節税があげられます。

誰か一人に給料が集中すると、その一人が受ける高額な給与所得に対して高い税率の所得税がかかります。

そこで、適切に家族従業員に対して給料を分配支給することによって、給料の一極集中を回避し、結果として世帯ベースでの所得税率を下げることが出来る、という節税手法が考えられるわけです。

 

 上記は一般的には節税対策として有効ですが、実は落とし穴があります。

それは、家族従業員が同一生計の場合における、不慮の社会保険料増加です。

つまり、節税メリットを受けるために、家族従業員にキッチリ給料を支給して所得分散を図った結果、思いがけず社会保険料の負担が増大してしまうケースがあるのです。

節税額よりも社会保険料の増加額が上回ってしまうと、本末転倒になってしまいます。

 

 わかりやすいよう、以下に具体例をあげて、その影響額を試算してみます。

※ 計算を単純化するため、復興特別所得税や住民税均等割等は少額無視するものとし、また、会社組織のため社会保険に強制加入するものとします。

 

 

 CASE 1(所得分散前)

 イ 夫:代表取締役社長 年収1,000万円

 ロ 妻:従業員 年収100万円(税・社会保険ともに扶養対象)

 ハ 世帯年収:1,100万円(=イ+ロ)

 

 

① 社会保険料:世帯年間1,260,000円(妻の負担額はゼロ)

 

② 所得税:世帯年間758,500円(妻の負担額はゼロ

 -給与所得-

 額面10,000,000円-給与所得控除1,950,000=8,050,000円

 -所得控除項目-

 社会保険料1,260,000円+配偶者控除380,000円+基礎控除480,000円=2,120,000円

 -課税所得-

 8,050,000円-2,120,000円=5,930,000円

 -所得税額-

 5,930,000円×20%-427,500円=758,500円(所得税最高税率:20%

 

③ 住民税:世帯間602,000円(妻の負担額はゼロ

 -所得控除項目-

 社会保険料1,260,000円+配偶者控除330,000円+基礎控除430,000円=2,020,000円

 -課税所得-

 8,050,000円-2,020,000円=6,030,000円

 -住民税額-

 6,030,000円×10.025%-2,500円=602,000円(住民税率:10.025% 調整控除2,500円)

 

 

④ 税金と社会保険料の世帯総額:年間2,620,500円

 (=①+②+③)

 

 

 続いて、CASE2です。

代表取締役社長である夫への所得集中を避けるべく、家族従業員である妻へ適正な給料を支給することにしました。冒頭にも記載したとおり、世帯ベースでの税額を下げることが狙いです。

 

 

 CASE 2(所得分散後)

 イ 夫:代表取締役社長 年収740万円

 ロ 妻:従業員 年収360万円

 ハ 世帯年収:1,100万円(=イ+ロ)

 

 

① 社会保険料:世帯年間1,651,000円(内訳は以下のとおり)

 夫1,113,000円 妻538,000円(扶養から外れたため)

 

② 所得税:世帯年間437,000円(内訳は以下のとおり

 <夫>

 -給与所得-

 額面7,400,000円-給与所得控除1,840,000=5,560,000円

 -所得控除項目-

 社会保険料1,113,000円+基礎控除480,000円=1,593,000円

 -課税所得-

 5,560,000円-1,593,000円=3,967,000円

 -所得税額-

 3,967,000円×20%-427,500円=365,900円(所得税最高税率:20%

 

 <妻>

 -給与所得-

 額面3,600,000円-給与所得控除1,160,000=2,440,000円

 -所得控除項目-

 社会保険料538,000円+基礎控除480,000円=1,018,000円

 -課税所得-

 2,440,000円-1,018,000円=1,422,000円

 -所得税額-

 1,422,000円×5%=71,100円(所得税最高税率:5%

 

③ 住民税:世帯年間545,200円(内訳は以下のとおり

 <夫>

 -所得控除項目-

 社会保険料1,113,000円+基礎控除430,000円=1,543,000円

 -課税所得-

 5,560,000円-1,543,000円=4,017,000円

 -住民税額-

 4,017,000円×10.025%-2,500円=400,200円(住民税率:10.025% 調整控除2,500円)

 

 <妻>

 -所得控除項目-

 社会保険料538,000円+基礎控除430,000円=968,000円

 -課税所得-

 2,440,000円-968,000円=1,472,000円

 -住民税額-

 1,472,000円×10.025%-2,500円=145,000円(住民税率:10.025% 調整控除2,500円)

 

 

④ 税金と社会保険料の世帯総額:年間2,633,200円

 (=①+②+③)

 

 

 いかがでしょうか?

CASE1とCASE2を比較すると、CASE2の方が世帯ベースでの税・社会保険料総額が増加してしまいました。

(税額はCASE2の方が少なくなっているものの(378,300円減)、社会保険料額がその減額幅を上回って増えています。(391,000円増))

 

 さらに、会社サイドでも年間391,000円社会保険料負担増(法定福利費)となります。

節税のつもりが、余計に支出額が増えてしまうのです。

 

 

 この現象は、社会保険の扶養優遇によって引き起こされています。

妻の年間給料が130万円以下の場合には、社会保険の制度上、夫の扶養家族に該当します。

(ちなみに、妻が従業員数501名以上の会社に勤務し、年収106万円を超える場合には、妻自身が社会保険加入対象となりますので、夫の扶養から外れることとなります。このケースの基準額は年収130万円ではなく、年収106万円となりますので注意が必要です。

扶養に入ることが出来れば、社会保険料は夫の給料に対してのみかかりますので、妻の負担額はゼロです。負担額ゼロで被保険者(正確には第3号被保険者と呼びます。)になることができるので、あまりに不公平な優遇措置だとして、自営業者からは批判されていることは有名でしょう。

 

 CASE1では、妻は社会保険上の扶養対象となり、夫の給料に対してのみ社会保険料が発生しますが、CASE2では、妻は扶養対象から外れ、夫婦それぞれの給料に対して社会保険料が発生することになります。

さらに、社会保険料は会社と社員の折半で負担する制度のため、社員の負担額が増えれば、同時に会社の負担額も増えるワケです。

 

 社会保険の扶養に入っている状態がいかにオトクであるか、よくお分かりいただけたかと思います。

 

 

 

 節税を考える際は、税金以外の影響額についても漏れなく試算しなくては、場合によっては失敗に終わります。

上記の例はその一例と言えるでしょう。安易な節税を提案した結果、不利益を被るなどどいうことがないように、専門家の慎重な判断が求められます。

 

 
(注)上記計算上の給与所得控除額や基礎控除額については、2020年~の数値を採用しております。2020年を境とした変更点につきましては、2020年からスタートするサラリーマン増税とは?をご参照ください。

 

 

 横浜の税理士 杉田卓也

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