横浜で税理士をお探しなら杉田卓也税理士事務所にお任せ下さい! 上場企業管理部門を経て独立開業した若手税理士がお客様目線の税務サポートを提供致します。

杉田卓也税理士事務所

〒232-0013 神奈川県横浜市南区山王町4-26-3 ストークビル秋山2階
横浜市営地下鉄 吉野町駅(横浜駅から10分)4番出口より徒歩1分

営業時間
9:00~17:00
定休日
土曜・日曜・祝日

複数会社設立で節税できる?

※ 以下掲載記事に関するメール等でのご相談はお受けしておりません。ご了承ください。

 

こんにちは!横浜の税理士、杉田卓也です。

今回のテーマは、『複数会社設立で節税できる?』です。

 

 

 会社がある程度成長してくると、事業の多角化を検討する時期に入ります。仮にA社という会社の中に、主力事業であるX事業部門を基軸として、成長過程事業であるY事業部門およびZ事業部門が存在するものとします。このままでも経営を続けることはできますが、Y事業部門およびZ事業部門の事業規模が大きくなるにつれて、それぞれの事業部門ごとの経営状況の把握が喫緊の課題となってきます。つまり、Y事業部門やZ事業部門における投資判断や成長戦略を策定しようとすれば、当然ながら現状の財務状況や損益状況を的確に分析することが必要となるワケですが、A社という一つの箱の決算書を見ても、X事業部門・Y事業部門・Z事業部門の合計ベースの数値しか表現されておりません。精緻な管理会計を施すことで、各事業部門に帰属する数値をはじき出すことは可能であるものの、それなりに手間を要することは間違いありません。

そこで、A社:X事業部門、B社:Y事業部門、C社:Z事業部門といったように、法人格そのものを分けてしまうというアイデアが登場します。会社自体が別々なので、一つの会社の中に3つの事業部門がある状態に比べて、意思決定のスピードが上がることは容易に想像できます。また、当然ながら個社ごとの決算書が存在しますので、会社の置かれている状況を把握することも容易です。仮に各事業部門のトップを各法人の経営陣に据えるのであれば、各事業部門の成績を上げるという被用者の視点から、会社の経営者の視点へシフトすることで、より当事者意識や責任感が増し、人材が急速に成長していくものと考えられます。

 

 会社の顧問税理士をしていると、上記のような状況にいるオーナー経営者さんから『もし複数の会社を設立することとなった場合に、税金はどうなりますか?得ですか?損ですか?』と質問されることがあります。

税務上の留意点を含めて以下にその取扱いをご紹介したいと思います。

 

まず結論から言って、複数会社設立は節税になります。

大きく分けて、法人税(地方税含む)と消費税にフォーカスして説明します。

 

① 法人税の取扱い

中小企業(資本金1億円以下の法人。一部除外規定あり。)に関しては、所得に応じて軽減税率が設けられております。

具体的には、所得800万円まで:法人税率15%、所得800万円超:法人税率23.4%が適用されるルールです。

地方税に関しても、所得400万円まで:事業税率3.4%、所得400~800万円:事業税率5.1%、所得800万円超:事業税率6.7が適用されるルールです。(神奈川県の場合)

すなわち、会社が複数あれば、それだけ軽減税率を適用できる枠が増えるということです。

上記以外にも交際費の損金算入枠など、法人格ごとに設けられている中小優遇規定に関しては、同じ理屈で節税に繋がります。

 

② 消費税の取扱い

新規設立法人は設立2期目まで消費税納税義務が免除される場合が一般的です。

(特定期間による判定により2期目から納税義務が生ずるケースもあります。詳しくは、会社設立すると消費税はどうなる?① 会社設立すると消費税はどうなる?③をご参照ください。)

この消費税納税義務免除のルールにより、顧客から消費税相当額を預かっているにもかかわらず納税する必要がないため、そっくりそのまま消費税部分が会社の懐に残る益税の状態ができあがります。

(2023年10月から適格インボイス制度が導入されれば、状況は一変する可能性があります。)

 

ただし、重要な留意点が存在します。それは、会社分割によって複数会社を設立するケースです。冒頭の例のように、従来1つの会社でX事業部門Y事業部門Z事業部門を抱えていたものを、会社分割によってY事業部門Z事業部門をそれぞれ切り出した場合をイメージして下さい。

消費税法には、会社分割による節税を防止する規定が用意されておリます。

仮に会社分割によってY事業部門を新設会社B社に承継したとします。この場合、B社は新規設立法人なので、設立2期目まで消費税納税義務が免除されると考えがちなのですが、実際にはそうではありません。設立1期目・2期目の納税義務判定には、分割法人であるA社の(基準期間における)課税売上高が採用されるのです。

また、設立3期目以降は、A社とB社の(基準期間における)課税売上高の合計額をもって納税義務を判定することとなります。

会社分割を検討するレベルであれば、課税売上高が1,000万円以下というケースはまずないでしょうから、新設1期目から納税義務を免れることはできません。

 

複数会社を設立する方法は、必ずしも会社分割による必要はありません。新たな成長事業を担うべく、A社の兄弟会社としてD社を設立し、D社にて新規顧客を開拓しながらその事業に特化・成長していくという方法もあります。

兄弟会社ではなく、A社の子会社としてD社を新設するケースもあるでしょうが、仮にA社の(基準期間における)課税売上高が5億円超であるならば、D社は特定新規設立法人に該当し、設立1期目から消費税の納税義務免除は免除されない点が注意点です。

 

 

 税金の取扱いは上記の通りですが、複数会社設立に伴う管理部門のコスト増を見落とすことはできません。会社を運営するうえで必要な各種手続きが会社の数だけ存在することとなりますので、そこに要する労力やコストを勘定に入れた上で検討することが肝要です。

 

 

 さらに、番外編としてオーナーの相続税対策としての目線を添えておきます。持株会社制を採用することで、相続税対策になるという話を耳にしたことがある方もいると思います

例えば、オーナー直下にA社・B社・C社という法人がぶらさがっているものとします。A社の業績が年々順調に成長し、株価が上昇していくものとすれば、いつしかオーナーの相続が発生した際には多額の相続税を負担することになるでしょう。

そこで、早い段階からオーナーとA社・B社・C社との間の階層に持株会社を設立します。例えば株式移転の方法による持株会社設立であるならば、時価課税はありません。

その結果、オーナーは持株会社を通してA社・B社・C社を支配することとなります。オーナーの相続発生時に相続税の課税対象となるのは持株会社株式です。

仮に持株会社A社・B社・C社株式を保有するにとどまる場合、持株会社は株式保有特定会社に該当し、純資産価額方式にて評価することとなりますので、その計算過程においてA社・B社・C社株式の評価額を計算する必要が生じます。

純資産価額方式の計算は、資産の相続税評価額-負債の相続税評価額-(相続税評価額-帳簿価額)×37%により計算するのが原則であり、含み益に係る法人税等相当額を控除するのが特徴です。(ちなみに、相続開始時3年以内に取得した固定資産等に関しては、財産評価通達によらず市場時価により評価します。)

換言すれば、持株会社制を採用することで、その後の会社の成長部分を含み益とみなし、37%相当額の控除計算を可能ならしめるのです。その結果、相続税の節税効果を発揮します。

 

なお、持株会社を設立したとたんに相続税の節税効果が表れるわけではないことに注意が必要です。

例えば税制適格株式移転にて持株会社を新設した場合、オーナーの持株株式簿価はA社・B社・C社株式簿価を引き継ぐこととなります。(組織再編時の株主が50名未満のため。)

仮にA社の資本金300万円、組織再編時の純資産評価額1億円とすれば、この時点で9,700万円の含み益が存在することになります。もし持株会社を設立した瞬間に、この含み益部分に対する法人税等相当額として37%を相続税評価上マイナスできてしまうのであれば、簡単に節税できてしまうことになります。

当然ながらそんなわけはなく、その節税防止に関して財産評価基本通達186-2(2)のカッコ書きに記述があります。

同通達では、株式移転により含み益が存在する場合、その時点での含み益相当額を37%マイナス計算上除外することとしております。

つまり、持株会社設立『後に』発生した含み益部分に関してのみ37%マイナス計算に反映させるという取扱いになっているのです。

 

 

と、ここまで税法条文や通達に沿った取扱いをご紹介しましたが、課税当局はどう判断するでしょうか?

もし複数会社設立が節税目的のみであったとすれば、税務調査で否認されてしまう可能性は否定できません。

ざっくりとした言い方をすれば、節税以外のビジネス上の経済的合理性が求められることとなります。実体のないペーパーカンパニーを複数設立して節税しようとすれば、それは節税ではなく租税回避だと認定されてしまうのがオチということです。

実際に、銀行が主導し株式の買取資金を融資する形で立ち上げた持株会社スキームに関して、課税当局が租税回避による否認を発動したケースが登場しております。

そもそもビジネス上の必要性があるのかどうか、事業の実体があるのか、慎重に検討するべきなのは言うまでもありません。

 

 

 

 

 

 横浜の税理士 杉田卓也

代表税理士の画像

お問合せ・ご相談はこちら

顧問契約等のご依頼は、メールフォームにて受け付けております。

営業終了後でもメールでのお問合せにつきましては、24時間受け付けております。

※顧問契約ご依頼に対するご返答はメールにて迅速対応しておりますが、ごくまれに当事務所からのメールが届かない (or迷惑メールに入ってしまう)ことがあるとの報告を受けております。

返答がない場合には、お手数ですが再度ご連絡いただくか、迷惑メールフォルダのご確認・解除設定をお願い申し上げます。

営業時間:9:00~17:00
定休日:土曜・日曜・祝日